考察するヒソト

元々ワードプレスでやっていました。執筆に集中したいので移行。色々考えます。

和語よりも漢語の方が日常語である事例群

漢語は外来語の範疇に入らないが、本質的には外来語である。外国語である。

 

長らく漢文及び変体漢文は日本の公式文書であったがゆえに、漢語(漢日語・漢日詞)は文書語であり、口語ではなかった。しかし、中国語及び漢字が日本でもちいられるようになって千年ほど経つと、反対に和語の方が文語的な事例も散見されるようになる。それらの例をここで示す。

 

  • ひねもす(ひもすがら)

口語では 一日中 あるいは 終日である。日常会話で ひねもす或いは ひもすがら と聞いたことがない。小説・文学作品でしか見ない。それも終日の上にルビ付きで。

  • おのれ 

おのれ あるいは おのれの よりも、自分の方が口語では優位である。しかし、ひねもす と違い口語でも問題なく使用できる。但し「おのれ」は感嘆詞としても用いられる語なので、女性は使いにくいか。

  • ともに 

一緒に、が優位である。「ともに」は少しかしこまった印象を与える。「一緒にレストランに行こう」と友人には言えるが、「ともにレストランに行こう」と言うと笑われるだろう。

  • およそ (おおよそ)

大体、大概、大抵が優位である。但し大体と

大概に関しては副詞的にも口語では用いられる。一往、大牴 も「大抵にしろ」と使えるそうだが、私は聞いたことがない。「大概にしろ」はよく聞く。

  • うつくしい 
  • きよい 

うつくしい と きよい は、綺麗に統合されてしまった。なんでもかんでも「やばい」と表現する人らを揶揄する人は少なくないが、beautifulとcleanを一語にまとめてしまう「綺麗」もどうかと思う。

  • みやび

都会的 あるいは上品 が優位である。文学作品・詩に限って偶に見る語。

  • このかた

以来イライが優位。江戸時代までは 以来の上に このかた と熟字訓で理解していたようだが、いつのまにか逆転した。

  • つまるところ さしずめ

結局 が用いられる。しかし、和語である つまり は結局と同頻度で用いられるため、漢語が優位になったとは言えないだろう。

  • やさしい(易しい)

Easyの意で やさしい は、完全な文書語である。口語ではやさしいはkindになる。簡単と言わねばeasyの意だと理解されにくいだろう。

  • あししげく

頻繁に が主に用いられる。私見だが、あししげく は具体的な動作が語に含まれているゆえ、ほんとうに足を使って通っている際に用いられる印象がある。

  • まことに

本当 あるいは 無作から転じた めっちゃ が口語では使われる。関西だと本真(ホンま)なる混種語が使用されるが、全国区のめっちゃと違い、ホンま は依然として関西方言。

  • ひときわ ひとしお

一層 の方が使用頻度が高い。ひときわ も 一層も類似した意味のハズだが、ひときわ は身長に対して使われる印象がある。ひとしお に関しては、一段あるいは一層が優位である。

  • このよ よ

世界セカイ の語が圧倒している。よ(世界の意での)は このよ あのよ うきよ と主に用いられる。世界なる仏教由来のコトバがここまで普及したのは興味深い。

  • みまかる 

死 という漢語なのか和語なのか判然としないコトバがある。音読みはシ 訓読みは し(ぬ)。おそらく、かつての日本人は きえる や けす かえる などで人の死を表現していたのだろう。死という概念は中国由来である。

  • さかさま さかさ

逆ギャク が優位。逆ギャクは本来 逆風など方向的に反対から来るベクトル込みでの概念だったのだが、現代の日本語の口語では単に反対の意。反対よりも短いからだろう。

  • おおく

沢山 なる明治以前に発生した和製漢語が優位である。おおく は少しかしこまっている。日本語に於いて、沢は潤沢・沢山・贅沢 など、数量が多いことを示す付属語として用いられる。

  • みちる 

満タン(満タンク)という漢語と英語の混種語が口語では使われる。みちみちている を口語で使うのは、よほどその語を使いたいときである。

  • しし 

肉ニクに駆逐された語。もしかすると しし は肉類全般には使えない単語だったのかも知れない。あるいは イノシシ  と混同を無意識に避けた結果。

  • かはひらこ 

蝶チョウになぜだか変わってしまった。古代の発音だとカパピラコ。響きは個人的には好きだ。

 

  • まったく

全然ゼンゼン という中国語においては少し書面語的な表現(らしい)がいつのまにか膾炙した。自然シゼンという語の影響と考えられる。

 

  • むしろ

席セキは音読みであり、訓読みではない。しかし、むしろ はおそらく平たい敷物に限定してしか使えない語だったようだ。そのため、より範囲の広いセキなる語が広がった。太平記にも坐席ザセキなる語がみつかる。 

 

  • かき

柵サクは漢語である。しかし、馬うま と同じく、古代漢語の可能性もある。偶然の一致かも知れぬ。よう と様ヨウ み と味ミ のような。

まとめ

ほかにも 台風タイフウ 野分のわき など、枚挙することはできるが、今回はここで終わる。

 

また、一々イチイチ と 一つ一つ(ひとつひとつ)など、漢語と和語で含意が違う語も沢山あるが、そこまでは網羅せずに終えます。